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2022年2月 8日 (火)

この日曜日(6日)に退院してきた。

この日曜日(6日)に退院してきた。また3月には、修理中の心臓工事のために入院しなければならない。腎臓くんは、心臓工事のために犠牲になったが、過酷な造影剤の攻撃にもかかわらずどっこい今でも多少は機能しているらしい。それにしても造影剤と言うのはどうにかならないものなのか。使った後の数値は明らかに1ポイントばかり下がっていた。もう一度やるから、その時は僕の腎臓くんが最後の力を振り絞って、よく耐えてくれることを願うばかりである。自分に所属しているものなのに自分の意思が通じないというのは理不尽ではないか。しかし、それもまたC'est la vie.こんなことをやってるより、あっさり死んだ方がマシだと思うが、医者は、決してそうはさせないとばかり、放置は苦しむだけだと脅してくる。苦しいのは嫌だし、家族が悲しむのも嫌だからなるようになれと、いまは開き直っている。
片手が使えないと本を読むのは厄介だ。そんなこんなで、初めて外でMacを使いたいと思った。一つは音楽を、モーツアルトとショパン、シャンソンにミュージカル、それに演歌を聞くためだ。もう一つはWifiと繋いでやりたいことをやる。スマホでもいいが、画面が小さくて見づらい。iPadは、前回入院した別の病院の病室に備えてあったのでいじったことがあったが、こっちはデカすぎて扱いづらく存在感ありすぎ。そこで、ちょうど良さそうだったiPad miniというのを手に入れて使い始めている。自分がMacに詰め込んだ音楽ソースは、いわゆる「同期」というやつでiPad miniに取り込んで聞けるようになった。ところが、病室で聞こうとすると、毎回ソフトがWifiに繋げといってくる。監獄の名残からか、病室ではTV以外のスマホその他の娯楽は禁止し、患者は治療に専念すべしというわけでWifiが通っていないのだ。だからこれを使おうとすれば、デイルームという共有スペースまで出かける必要がある。デイルームは西新宿から北の池袋方面に開けた風景を一望する気持ちの良い空間で、ここにはWifiが通っている。パソコンを使う連中(といってもそう多くは無い。なぜならここは老人だらけだから。)はここに集まってくる。
まだ、iPad miniを持っていなかった前回入院のとき、隣に座っていた若者が、PCと向き合いイヤホンを使って何か喋っている。小声だから何を言っているのかはわからない。そのうちに気になりだして耳をすましたら、なんと聞こえてきたのは日本語ではない。恐ろしく早口で呟くように何かを喋っている。顔は日本人みたいだけれど南方系ではないどちらかといえばモンゴリアンの原種に見えたからあれはモンゴル語であったか。いや、そうでないかもしれない。聞いたこともない言葉だった。こんな若いものがなぜここに入院しているのか?それも不思議だった。日本人女性が付き添って入院した英語をしゃべるアラブ系の顔の若者もここでPCを使っていたが、その後再入院した時には、見えなくなったいた。
いつも病室から抜け出し、実はフラフラしている頭をそうは見えないように装いながら(そう見えたら、たちまち行動制限が掛かってベッドに縛り付けられる)長い廊下を歩いて、ここのソファの一角を占領してiPad miniを使っていた。Webでメールも調べ物もできる。音楽はもちろんだが、最も重宝したのはAmazon Prime Videoが見られたことだ。ある理由があって「孤独のグルメ」を見始めたらやめられなくなって、このシリーズを今もずっと見続けている。
ある日の夕方、Videoを見ていると、目の端に、明らかに女の裸の長い足が入った。少しずつ目を上げていくと、黒いロウヒールの脛から太ももの上は極度に短い黒いパンツである。げげっと思って、顔を上げると丈の短いブラウスみたいなものの肩の上にタオルを巻いて濡れた髪をのせている。極めて大型の女である。僕より背が高いかもしれない。恐ろしいことだ。こういうのは何かこう「違反」ではないか?近くにシャワー室があるからその帰りなのだろう。向こう向きで幸い顔は見えない。顔は見ない方がイメージ力を働かせられるからいいに決まっている。この背中がスマホでしきりに話をしている。僕は後ろめたい気がして、目を逸らし、なるべく見ないようにしたが、耳はダンボのようになってしまった。これがなんと、予約していた美容院か何かの延期または取り消しの件をしゃべっているのだった。病院にはない光景だから強く印象に残った。この大胆不敵な女はどこへ行ったものか、見たのはこの一度きりで、行くへは杳としてしれない。
こんなことが衝撃なのは、ここには爺さんと婆さんしかいないからだが、反面若い女といえば看護師が大勢いる。しかし、彼女らがそうは見せないのは不思議といえば不思議である。病院生活が長くなると、だんだん病人慣れして人が悪くなるものだというのは本当らしい。

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