「らかん亭」広告コピーシリーズ6
天恩山五百羅漢寺境内「らかん亭」
黙想する僧の、おびただしい木彫が並ぶ。
個性あふれる座像には各々仏の大切な教えが込められているというが、その写実的な姿にはむしろ、永い瞑想によって真理に迫ろうとするそれぞれの智者の、深い精神の営みが刻まれているように見える。
天恩山五百羅漢寺。
時が止まったような静謐の境内は、激しく車の行き交う幹線道路と隣り合わせにある。
お店は参道脇にあって、法事の他一般にも精進、懐石料理を供している。
厨房を率いているのは玉野明宏調理長。
料亭に長く、精進料理を格別修行したわけではないが、これまでの経験と独学で得たものを表現してきたという。宗門の僧侶とのおつきあいが深まるにつれ、いまでは「世に逆行するようですが精進料理の神髄にこだわりたい」とのことである。冷静に健康を考えれば、古来の精進もまた考え直されるべきかも知れない。
写真は、お昼のお弁当で、ベジタリアンむきではないが、いずれも手抜きをしない緻密な仕事ぶりである。例えば、自家製のからすみを口に入れると、鼻先にほのかな酒の香がして、ごく薄い塩味が鯔の卵の熟成したまろやかさを強調するオリジナルである。添えた青味大根で塩気を和らげる必要などさらさらない。
南瓜は裏ごしした後を寄せたもの、百合根も潰して昆布を渦に巻き込んである。また、蟹を巻いているのは、長芋を極細く突いたもので、歯触りが楽しめるという趣向である。
献立の妙もそれを表す技量も、長い修練の賜であり、近頃のように、僅かの時間、自らを打擲して得た束の間の幻覚を究極と誤解する性急さとは無縁のものである。いま思えば、腕を組み空を見上げる調理長の物静かな姿に、よく似た羅漢さんがいたような気がする。
ヒゲタ醤油「本膳」
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