« 江戸懐石「花汀」(神田須田町)広告コピーシリーズ5 | トップページ | 「らかん亭」広告コピーシリーズ6 »

2013年10月21日 (月)

日本料理「万寿」(五番町)広告コピーシリーズ6

昔(1994年~98年ごろまで)、書いたコピーを掘り出して載っける「広告コピーシリーズ」

日本料理 「万壽」

腕利きの職人がしばしば寡黙であることを私たちは知っている。自分の手仕事を翻訳して人に伝えるのがどれだけ困難なことか分かれば、饒舌に徹するか、作ったものをみて味わってくれと黙して語らずを決め込むしかない。

市ヶ谷駅に近い五番町の一角に高層のビルが建ったのが五年前、落成と同時にここ万壽もオープンした。テーブル席とお座敷のこぢんまりしたお店だが、すべて宮大工の手が入ったという数寄屋風の内装は、さりげなく贅を尽くしていて気分がいい。お客をもてなすという点でこれ以上の風格、雰囲気は望めないといった設えである。

開店前から料理担当として計画に加わってきたのが調理長の斉藤釗さん。東京で修行を続け、赤坂の料亭を最後にこちらに招聘された。寡黙に見えたが、料理の感覚にはきりりとした才気が感じられる。

蛤という季節の素材を使って雛に見立てた寿司。江戸前握りにも昔からあるねただが、そのくっきりと付ける味わいに較べたら、遥かに淡く幽玄な味に仕上がっていて、頭の部分の染めおろしがからんでさらに奥行きを与える趣向になっている。

八寸のつもりという緑と金の対比があざやかな器も、盛りつけの感覚が面白い。石垣花豆という羊羹風のものはグリーンピースの餡に花豆という取り合わせで蕨やこごみとともに一目で季節感を味わえる色彩表現になっている。黄身がかかった焼き物は、酒盗に漬けて風干しにしたさよりだが、名前に似合わず肉厚で歯ごたえがあり、旬とはどういうものか合点がいく作りである。これらの料理を通して、その才能や技量、細やかな芸、気働きは十分に私たちに伝わってくる。いい仕事はたくさんの言葉を必要としない、一つの証左がここにある。

Photo
ヒゲタ醤油「本膳」

| |

« 江戸懐石「花汀」(神田須田町)広告コピーシリーズ5 | トップページ | 「らかん亭」広告コピーシリーズ6 »

広告コピーシリーズ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 江戸懐石「花汀」(神田須田町)広告コピーシリーズ5 | トップページ | 「らかん亭」広告コピーシリーズ6 »