2017年9月 7日 (木)

萱野稔人「国家とはなにか」を読んで考えたこと(その1)

冒頭の記述は、こうである。 「国家というのは、いかにもとらえがたいもののように見える。」 我々老人にとって「国家」が捉えがたいものに見えると言う感覚は、いかにも理解しがたいものに思える。 というのも、戦後、繰り返してきた不毛な議論の中核にあったのは、結局この「国家」および「国家と個人」との関係をめぐる見解の相違だったからだ。 かなりおおざっぱに言えば、まず、天皇とその臣民で構成される共同体こそ日本...

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2017年8月 8日 (火)

劇評「イヌの仇討ち」

記憶の最初にある大石良雄は、東映正月映画の片岡知恵蔵、そのとき吉良上野介は月形龍之介、大川橋蔵の浅野内匠頭である。同じ頃、ライバル東宝の大石、松本幸四郎(八代目)に先代の市川中車が憎々しげに吉良を演っていて、若大将、加山雄三の浅野内匠頭というのも覚えている。NHK大河、例の「オノオノガタ」(昭和39年)の時は、長谷川一夫になんと滝沢修の吉良だった。 映画もTVも「仮名手本忠臣蔵」を横目で見ながら、...

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2017年3月18日 (土)

劇評「円生と志ん生」(2005年初演)

「あばらかべっそん」は文楽、「なめくじ艦隊」は志ん生の半生記、円生も何か書き残しているかもしれないがあまり贔屓でないから知らない。 酒がたら腹飲めるというので円生(辻萬長)と二人で満州に出かけた話は確か「なめくじ艦隊」にでていた。この二人が終戦の一週間前にソ満国境を越えてきたソ連軍に追われて多くの日本人とともに大連に閉じこめられたときの話を芝居にしたものだ。大連に抑留されていたのは六百日間にも及ん...

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2017年2月28日 (火)

劇評「私はだれでしょう」(2007年初演版再掲)

再演が近いので10年前の初演当時のものを引っ張り出した。 劇評「私はだれでしょう」(2007年1月) 終戦直後からしばらくのあいだ、NHKラジオでやっていた「尋ね人の時間」の制作者たちの話である。「尋ね人の時間」は、終戦の混乱から消息が分からなくなった人を、ラジオ放送を通じて探すという内容で、聴取率90%にもなった国民的番組である。「昭和18年ごろ満州黒竜江省の○○に住んでいた××さん、隣組で一緒...

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2017年2月 4日 (土)

劇評「ザ・空気」

見てすぐにツイッターをアップした。まずそれから紹介しておこう。 「夕べ、二兎社『ザ・空気』を見た。「空気」が形成されるオソロしさはいまいち見えなかったが『高市発言』への憂慮と怒りは、全面展開。許認可権の前でうなだれるTV局幹部、死に損ないと転向職員の諦念を前にして、やっぱりこれからニュースはWebしかねえのか?と取り残される思いのおいらでした。」 報道番組の制作スタッフが放送局上層部の日和見に振り...

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2017年1月22日 (日)

「ボトルウォーターの輸出が疲弊経済を救う」( 2011年1月 )より

  6年前、僕は地方再生の切り札として『水』の輸出事業を提案する本を電子出版した。具体的には、白神山地の水(年間降水量4,000㍉)を能代港(百万トン級岸壁)から世界に輸出する構想だったが、学生仲間の新年会で10部ほど売りつけた他は、ほぼ誰も読んでくれなかった。それは仕方ないことで気にもしていないが、最近、その中に書かれていることで、再確認の必要があると思ったことがある。 それは『マーケ...

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2016年9月22日 (木)

宮城公博「外道クライマー」を読んだ

宮城公博「外道クライマー」を読んだ 文章が面白いという噂を聞きつけて読む気になった。 宮城公博は1983年生まれの33才、自ら「沢ヤ」と称して、もっぱら沢登りを主体に冒険的な登山をする人物らしい。 沢を遡行するのは頂上へ至る最も効率的なルートだが、水は流れても人が通れるとは限らない。背丈よりも高い滝が現れることもある。深い雪解け水の淵が行く手を阻むこともあるだろう。 また谷が狭くなったところを奔流...

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2016年8月27日 (土)

劇評「薮原検校」(2003年木村光一版)

開幕の口上のさなか、飢饉のため津軽の盲人がおよそ三百人、徒党をなして米どころ秋田に向かうという場面がある。五所川原を発った一行は、鯵ケ沢、深浦と海岸をたどり、峻険な艫作(へなし)崎にさえぎられ、迂回して岩崎へ山越えしようと中山峠にさしかかる。 右手に白木の杖、左手で前のものの肩をつかみ、雪の中をこけつまろびつ、盲人達が「・・・雪崩に飲まれりゃ叫喚地獄・・・雪の峠を漕ぎ分けりゃ、着たる浴衣も血で染ま...

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2016年7月19日 (火)

劇評「あわれ彼女は娼婦」

タイトルが、どんな意味か、俄には腑に落ちなかった。 この英国エリザベス朝に書かれた名高い古典を知らないものが悪いと言われれば、返す言葉もないが、これは日本語として、いささか問題があるのではないか? と、思ったら英語で「’Tis Pity She’s a Whore」とルビが振ってある。 「Tis」は「It is」の古語・詩語・短縮形で、「Pity」は「哀れ」あるいは「気の毒」「残念なことに」といっ...

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2016年5月 7日 (土)

或る「比喩」について

中村隆一郎 2016年5月7日 或る「比喩」について この間、三ヶ月に一度の定期検診のとき、病気の再発が見つかった。実は、去年の暮れあたりから息切れしたり、足が腫れたりして、おかしいとは思っていたが、まだ死ぬこともあるまいとたかをくくっていた。ところが、文字通り、胸のあたりの騒ぎが頻繁に起きるようになって、そろそろ俺も一巻の終わりかと思うことが多くなった。晴れた日の午後、木陰を歩いていると、しきり...

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«映画「ブリッジ オブ スパイ」映画館でのマナーに一言